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オリゴクローナル抗体を用いたエピゲノム解析

 ヒストン修飾のエピゲノム解析には、修飾特異的抗体を用いたChIP-seq(クロマチン免疫沈降と大規模塩基配列解析)が用いられますが、そのデータの質は、クロマチンの調製法や用いた抗体の性質などに依存します(1)。その中でも特にヒストン修飾特異的抗体の特異性が重要であるにも関わらず、多くの実験がウサギ由来のポリクローナル抗体を用いて行われています。ポリクローナル抗体の問題点として、特定のロットの抗体が有限であるということが挙げられ、実験の再現性を確かめることが困難です。また、市販されているポリクローナル抗体の中には、特異性が低く、他の修飾と交差するようなロットも存在しており、そのような抗体を用いた解析では、バックグラウンドレベルの上昇や擬陽性シグナルの検出などの問題が生じてきます(2-4)。従って、同一ロットの大量供給が可能な高い特性と親和性を持つモノクローナル抗体の開発は標準エピゲノムデータの取得を行う上で非常に重要であると考えられます(5)。しかしながら、モノクローナル抗体の場合、高次構造や近傍の修飾の影響を受けやすく、単一のモノクローナル抗体が万能であるとは限りません。また、マウスのモノクローナル抗体は一般に抗原への親和性が弱いとされています。そのため、同一の標的を認識する複数の異なるモノクローナル抗体を混合したオリゴクローナル抗体が標準試薬として理想的であると考えられます(1)。つまり、オリゴクローナル抗体は、モノクローナル抗体の特異性と再現性を保持しつつポリクローナル抗体以上の感度を有すると考えられます。

 IHECで対象とするヒストン修飾は、H3K4me1, H3K4me3, H3K9me3, H3K27me3, H3K27ac, H3K36me3の6種類ですが、特に、K4, K9, K27付近には、修飾を受けるアミノ酸(R, Sなど)が多く存在しています(図1)。従って、異なるエピトープ領域を持つ複数のモノクローナル抗体を作製することができれば、周辺の修飾に依存せずに特定の修飾を持つクロマチンを全て回収することが可能になります。また、オリゴクローナル抗体のエピゲノム解析の結果を単独の抗体と比較することで、エピゲノム修飾の組み合わせの様子を明らかにすることもできると考えられます。

 現在、我々は、各ヒストン修飾に対して複数のモノクローナル抗体を作製し、オリゴクローナル抗体の開発を行っています。


図1:オリゴクローナル抗体

(1) Kimura H. Histone modifications for human epigenome analysis. J Hum Genet 58, 439-445 (2013).
(2) Egelhofer TA et al. An assessment of histone-modification antibody quality. Nat. Struct Mol Biol 18, 91–93 (2011).
(3) Clayton, AL, Hazzalin CA, & Mahadevan LC. Enhanced histone acetylation and
transcription: a dynamic perspective. Mol Cell 23, 289–296 (2006).
(4) Wadman M, NIH mulls rules for validating key results. Nature 500, 14-16 (2013).
(5) Kimura H, Hayashi-Takanaka Y, Goto Y, Takizawa N. & Nozaki N. The organization of histone H3 modifications as revealed by a panel of specific monoclonal antibodies. Cell Struct Funct 33, 61–73 (2008).