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研究組織

ファンディングエージェンシー

日本医療研究開発機構(AMED)戦略的創造研究推進事業 (CREST)
「エピゲノム研究に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」研究領域

山本 雅之 (やまもと まさゆき)
研究総括
東北大学大学院医学系研究科 教授

牛島 俊和 (うしじま としかず)
副研究総括
国立がん研究センター研究所 エピゲノム解析分野・分野長

研究チーム

IHEC日本チーム(CREST/IHEC)の紹介

国際ヒトエピゲノムコンソーシアムThe International Human Epigenome Consortium (IHEC)へ参加するIHEC日本チーム(CREST/IHEC)は、3つの研究チームから構成されています。消化器(胃、大腸、肝臓)の細胞種毎のエピゲノムを決定する金井チーム(2011年開始)、体内各部位の血管内皮のエピゲノムを決定する白髭チーム(2011年開始)、胎盤及び子宮内膜の細胞種毎のエピゲノムを決定する佐々木チーム(2012年開始)です。これらのチームは、日本らしい丁寧な細胞の分離だけでなく、ヒストン修飾のモノクローナル抗体やPBAT法など独自に開発したエピゲノム解析技術の面でも国際的に評価されています。

金井 弥栄 (かない やえ)

金井チーム

研究代表者
金井 弥栄 (かない やえ)
慶應義塾大学医学部・教授
国立がん研究センター研究所分子病理分野・分野長

 私たち国立がん研究センター研究所分子病理分野の研究者は、日本病理学会が認定する病理専門医でもあって、国立がん研究センター中央病院にも併任し、毎日多数のがん患者さんの生検・手術検体の病理診断を行っています。研究者の視点で病理診断を行い、一人一人の患者さんのがんの個性について、治療指針になる情報を主治医達に少しでも多く提供したいと考えています。他方で、私たちが顕微鏡で日々観察しているがんの形態学的多様性 (heterogeneity)は、がんの生物学的特性を反映するもので、多段階発がん過程の進展の証と考えています。そして、外科病理診断の実践を通して得た着想を基盤に、診療に還元できるリアリティーのあるがん研究をしたいと常に念じています。

  従来、がんは遺伝子の変異・増幅・染色体構造異常等の蓄積でおこると理解されてきました。しかし、がんの形態学的多様性の全てを、ジェネティックな異常のみでは充分に説明できないことから、私たちは発がんにおけるエピジェネティック機構にいち早く着目しました。

  私がこの分野の論文を初めて刊行したのが1995年でしたが、これはがんのエピジェネティクス研究の黎明期にあたりました。前がん状態にDNAメチル化異常が見られることは今や世界の定説で、自分ではそれを最も早く指摘した一人と自負しています。しかし当初は、がん遺伝子時代の価値観に受け入れられず、「肝がんではない肝硬変で変化しているのだから、DNAメチル化異常は肝発がんと関係ない事象である」との査読者のコメントと格闘しなければなりませんでした。その後、ウイルスの持続感染等を伴う慢性炎症や喫煙と、DNAメチルトランスフェラーゼの異常を伴うDNAメチル化異常の関連を、病理組織検体において詳細に解析してきました。エピジェネティックな異常のゲノム網羅的解析すなわちエピゲノム解析が可能になると、前がん段階におけるDNAメチル化異常はエピジエネティック・ジェネティックな異常をさらに誘導して、生じるがんの悪性度と症例の予後を規定することが分かってきました。また、維持メチル化機構で安定に保持され、微量の体液検体等で高感度解析が可能なDNAメチル化異常は、診断指標として優れています。そこで私たちは、諸臓器がんの発がんリスク診断法・予後診断法を開発して、臨床検査としての実用化を目指しています。

  他方では、ヒトの検体の解析から臨床応用可能な知見を得るために、組織・細胞系列毎に多様性があるエピゲノムの本質を避けては通れません。解析技術と情報処理技術が進歩を遂げた現在こそ、ヒト細胞のエピゲノムの多様性を明らかにすべきで、IHECの理念には強く共感致します。発がんの外的要因が前がん段階からエピゲノムに影響する様子を解析してきたので、環境要因に応じたエピゲノムの多様性にも大いに興味を持っています。このたび、IHEC対応型CRESTに採用して頂き、日本チームのひとつとして、エピゲノムの多様性解明を掲げたIHECに参画することが許されました。ファンディングエージェンシーであるJST・我が国のIHECへの参加を後押ししてくれた諸学会と、私のチームに加わってくれた共同研究者の先生方に深く感謝しております。多数の日本人から得られた純化細胞の標準エピゲノムプロファイルを決定して、世界共有の研究基盤となるデータベースを充実させて国際貢献を果たし、歴史に残る仕事をしたいと考えています。疾患エピゲノム研究者としては、IHECの成果を疾患特異的エピゲノムプロファイルの効率的で正確な同定に活かし、エピゲノム診断・治療のブレイクスルーにつなげたいと考えています。

  さらに私たちは、植物からヒトまで、あるいは基礎生物学から臨床医学までの、我が国の多くのエピゲノム研究者の代表としてIHECに参加させて頂いていることを肝に銘じています。国際コンソーシアムにおいて我が国のプレゼンスを示すとともに、本ホームページの運営やシンポジウム開催等を通して、解析技術や研究動向に関するIHECで得られた情報をいちはやく我が国の研究者に伝達し、我が国のエピゲノム研究の更なる隆盛に寄与したいと考えています。

 

研究代表者
金井 弥栄
(かない やえ)
慶應義塾大学医学部・教授
国立がん研究センター研究所分子病理分野・分野長
課題名「研究の総括とヒト消化器上皮細胞の標準エピゲノム解析」

主たる共同研究者
柴田 龍弘
(しばた たつひろ)
国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野・分野長
課題名「ヒト消化器上皮細胞の標準エピゲノム解析と解析技術開発」
伊藤 隆司
(いとう たかし)
九州大学大学院医学研究院医化学分野・教授
課題名「ヒト消化器上皮細胞の標準エピゲノム解析と解析技術開発」
鈴木 穣
(すずき ゆたか)
東京大学大学院新領域創成科学研究科・教授
課題名「ヒト消化器上皮細胞の標準エピゲノム解析と解析技術開発」


白髭 克彦 (しらひげ かつひこ)

白髭チーム

研究代表者
白髭 克彦 (しらひげ かつひこ)
東京大学分子細胞生物学研究所・教授
エピゲノム疾患研究センター・センター長

 最近、エピジェネティクス、エピゲノムという言葉を耳にする機会が多いと思います。エピジェネティクスとはDNAの配列変化を伴わずに細胞から細胞へ、世代から世代へ継承されうる遺伝子発現制御メカニズムのことを指し、エピゲノムとは、エピジェネティクスを規定するヒストン修飾やDNAのメチル化修飾、の全ゲノムレベルでの状態を指します。エピジェネティックな制御は発生、分化過程を含め、ありとあらゆる細胞の個性を規定しているため、その制御メカニズムの探求は細胞レベルだけではなく個体レベルでの生命の理解に必須です。エピジェネティクス、エピゲノムというと何やら呪文のような不可解な印象がありますが、一昔前のいわゆる転写制御研究と本質的に同じものです。

 こういったエピゲノム解析に欠かせない技術の一つが次世代シークエンサーを用いたタンパク結合部位の網羅的プロファイリング技術、ChIP-seq解析と呼ばれるものです。我々のグループは油谷浩幸先生のグループ(東京大学先端科学技術研究センター)と共に、このタンパクプロファイル解析(ChIP-chipおよびChIP-seq解析)では世界的に見ても草分け的存在です。ChIP-seq解析と言いますと誰でも出来る技術として既に完成されたものであるという印象を持たれるかもしれません。しかし、実際はまだまだ発展途上の技法です。IHECでは、この15年間の間に我々が培ったノウハウを生かしつつ、ChIP-seqの現状での問題点を克服して行きたいと考えています。特に、本課題では2つのChIP-seqの抱える問題点についてその解決を目指したいと考えています。一つ目は解析に必要なサンプル量です。従来のChIP-seq解析では一つの解析に必要な細胞数はおよそ100万個から1000万個でした。しかし、これでは実際の病理組織をはじめ貴重なヒトの組織サンプルで解析を行う事は不可能です。そこで、まず、ChIP-seq解析系をより少数の組織、細胞(10000から1000細胞程度。少なければ少ないほど良い)で実施可能な系へ展開して行きます。2番目に、未だ一般には認識されていないChIP-seq解析系のバックグラウンドについて正しく評価できる系を構築したいと考えています。このバックグラウンドの問題というのは非常に深刻で、我々は経験的に転写活性の高い遺伝子のプロモーター、コーディング領域が非特異的なバックグラウンドになり易い事を知っています。ChiP-seq法により解析されている因子の大半は転写と関係する因子ですから、このようなバックグラウンドの問題は放置できないはずなのですが、世の中で発表されている仕事の多くでは、この問題は基本的に論じられずに今日に至っています。われわれは現在、この課題の中で、其の原因の解明と解決法の開発に取り組み、徐々にではありますが成果を上げつつあります。以上のような基本的問題点を克服しつつ、IHECの標的組織としてはヒトの12種類におよぶ血管内皮細胞について順次そのエピゲノム情報を明らかにして行きます。

研究代表者
白髭 克彦
(しらひげ かつひこ)
東京大学分子細胞生物学研究所・教授
エピゲノム疾患研究センター・センター長
課題名「エピゲノム解析の国際標準化に向けた新技術の創出」

主たる共同研究者
和田 洋一郎
(わだ よういちろう)
先端科学技術研究センター・教授
課題名「標準エピゲノム解析 ・病態エピゲノム解析 ・新規エピゲノム解析技術の開発」
木村 宏
(きむら ひろし)
東京工業大学 生命理工学研究科 教授
課題名「オリゴクローナル抗体の開発」
光山 統泰
(みつやま とうたい)
産業技術総合研究所 人工知能研究センター・研究チーム長
課題名「エピゲノム情報解析パイプラインの構築 ・エピゲノムデータベースの構築」


佐々木 裕之(ささき ひろゆき)

佐々木チーム

研究代表者
佐々木 裕之(ささき ひろゆき)
九州大学生体防御医学研究所エピゲノム学分野・教授
九州大学エピゲノムネットワーク研究センター・センター長

 私たちの研究チームは、長年にわたり哺乳類の正常発生を制御するエピジェネティクスの仕組みを研究してきました。基本的なメカニズムの解明にはマウスを用い、これまでに、哺乳類の正常発生に必要なゲノムインプリンティング現象に配偶子のDNAメチル化が必須であること、哺乳類の生殖細胞にpiRNAやsiRNAなどの特殊な小分子RNAによる遺伝子発現制御があることなどを発見しました。それらの研究成果はすでにネイチャー、サイエンスなどの国際誌に発表しています。

 一方、もともと医師である私は、このような基礎的な研究成果をヒトの病気の解明に役立てたいと考えてきました。私たちの研究領域では不妊、不育症、先天的な子どもの病気、小児や成人女性のがんが問題となっており、最近では胎児期の栄養状態が成人病の発症に関わることも示されています。また、エピジェネティクスは生殖補助医療や再生医療の発展にも重要です。今回、国際ヒトエピゲノムコンソーシアム(IHEC)へ参加するにあたり、私たちが着目したのは胎盤と子宮内膜です。これらはゲノムインプリンティングの研究においても非常に重要な器官(組織)でした。そもそもゲノムインプリンティングは数ある動物の中で有胎盤哺乳類にしか見られない現象で、そのためインプリンティングの進化には母体からの栄養供給が関係していると考えられています。また、胎盤におけるインプリンティングにはDNAメチル化が関与しないなど、この器官だけのユニークなエピジェネティックな制御も見られます。そして、これらの器官は様々な疾患と関連しています。

 本研究では、正常な胎盤および子宮内膜に由来する細胞の標準エピゲノムを決定することで国際ヒトエピゲノムコンソーシアム(IHEC)に貢献し、このデータを様々な疾患の研究に役立てる基盤を作ります。そのため、新たなエピゲノム解析技術の開発にも挑みます。また、取得した標準エピゲノムを妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、胞状奇胎、子宮内膜症に由来する細胞のエピゲノムと比較し、これらの疾患の病態と原因を解明するための突破口を作りたいと考えています。我々の研究課題名は「生殖発生に関わる細胞のエピゲノム解析基盤研究」です。

 本研究を開始するにあたり、産婦人科領域の研究者が率いるふたつの研究室と、バイオインフォーマティクスの専門家が率いる研究室に参加を願い、合計4研究室がタッグを組む体制を整えました。最強のチームを編成できたと考えています。私たちは本研究の遂行を通して、エピゲノム研究の推進と世界の人々の健康維持に広く貢献することを目指します。

 

研究代表者
佐々木 裕之
(ささき ひろゆき)
九州大学生体防御医学研究所・教授
課題名 「生殖系エピゲノム解析基盤研究」

主たる共同研究者
有馬 隆博
(ありま たかひろ)
東北大学大学院医学系研究科・教授
課題名 「胎盤と関連疾患のエピゲノム解析」
秦 健一郎
(はた けんいちろう)
国立成育医療研究センター研究所・部長
課題名 「子宮内膜と関連疾患のエピゲノム解析」
須山 幹太
(すやま みきた)
九州大学生体防御医学研究所・教授
課題名 「エピゲノムデータに基づく生殖系遺伝子発現制御機構の解明」